帰宅すると会社宛に心当たりのない請求書が届いていた。「作曲代」とあるが、曲を依頼した覚えはないし、それをする理由も無い。不思議に思ってアネットに尋ねたところ、アネットが曲作りを依頼したらしい。
[hide&seek]
雑踏に紛れて不意に 隠すシルエット
理不尽抱えて 舞い降りる手紙
漆黒に溶けた涙 落ちてくハット
格言が突くは お揃いの証伏線を真実に 不可能を可能に
沈黙に花束を 哀しみを笑顔に
差し出した手のひら 飛んでいけるのなら[hide & seek]
今宵も傘に傷跡入れて
あなたの秘密を受け止めるよ
[catch & run]
今日の風を味方につけて
あなたの心を探しにいくわ
良い曲だ。情景描写が綺麗でサスペンス的な要素との相性も良い。そういえばHERO活動も多角化したいとアネットが話していたが、それだろうか、と思っていたら違った。
「エミリアがグズって寝ないことが多いから、子守唄を作ったの」
「……子守唄?」
この躍動感あふれる曲が?
「歌詞は作れるけど曲は作れないからお願いしてた」
ちょうどその時、ベットで寝ていたエミリアがグズりだした。アネットはエミリアを胸に抱くと、子守唄とは名ばかりとしか思えない「Hide&Seek」を歌い出した。
次第にエミリアはのグズりは止んで、アネットの胸の中でスヤスヤ寝始めた。
私には育児がわからない。