King’s Diary

ある葬儀屋の日記です。創作です。

2257/06/13

  アネットが結婚した。あいにくの雨模様だったが、参列者の方々は雨予報であることを知って「アネットの結婚式だし」と色とりどりの傘を用意してくれていたことに驚いた。参列者の皆が傘を差していく光景はとても美しかった。

  参列者の大半はアネットとルドルフくんの共通の友人で、人数も少しに抑えたと聞いていたが、グレイが居たのが意外だった。何回か仕事を変わってもらったことがあり、それからの付き合いらしい。まさか文字通りアネットのPinch-Hitterをしていたとは思わなかった。HEROバトル以外では接点が無かったので、交友を深める良い機会になった。

 

  お祝いだと酒をつがれそうになったが、そういうのはあの二人にしてくれとやんわり断りながらスローペースで酒を飲んだ。思った以上に色々な感情が押し寄せていた。式が終わってアネットが「私が手紙を読んでいる時、お父さん泣いてたでしょ」と言われたが必死で否定した。アネットからの席からは、はっきり涙を流しているのが見えたと言われた。泣くかもしれないと覚悟はしていたが、実際に娘からこうやってからかわれると、つい否定したくなる。

 

  二次会は二人の共通の友人が中心の会。誘ってくれたが、二人に遠慮して欠席の旨を伝えたのは正解だった。静かに紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせないといけない。帰って引き出物のカステラをマリーに供えて、紅茶を飲んだ。落ち着いて幸せを噛み締めた。

 

  アネットからの手紙は金庫にしまった。つらいときはこの手紙を読むことにしよう。