King’s Diary

ある葬儀屋の日記です。創作です。

2258/10/28

  ミッションの準備に時間を取られてしまい、ルドルフくんから「生まれました」というショートメッセージが2時間も放置してしまっていた。メッセージを見て慌てて病院へ向かった。看護師さんが笑いながら病室を案内してくれた。よほど慌てているように見えたのだろう。

 

  病室へ向かうと赤ん坊の大きな鳴き声が響いていた。

  アネットはベットに横たわっていて笑いながら私に手を振った。

  その横にいたルドルフ君が泣き腫らした顔を私に向けた。

 

  それで私は、「孫ができた」のだと芯から実感できた。

 

  そういえば名前をどうするか聞いてなかったのでアネットに聞くと「エミリア」という答えが返ってきた。

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「新婚旅行でイタリアに行っていたな」

「うん。そこの料理がすごく美味しくて、街の人達も親切で明るかった。そういう人になって欲しいってルドルフさんが言ってて、私もそう思った」

 

 

  アネットから、

「男の子だったらお父さんが出してくれた『トンヌラ』にしようかってルドルフさんと話していたんだけどね」

  と言われた。「子供の名前に私に気を使わないでいい」とメッセージを込めてダサい名前を提案したのだが、さすがに冗談だと思いたい。ともあれ、生まれてきたのが女の子で本当に良かった。

  私達が話している最中、ルドルフ君はずっと泣いていた。こんなに涙もろいとは思わなかったが、気持ちはよく分かるのでそっとしておいた。

 

そういえばアネットが生まれたときはどうだったかと思い、昔の日記を開いた。

ついに生まれた。マリーが元気な女の子産んでくれた!名前はアネットだ!

すごい!すごい!やったー!やったー!うれしい!うれしい!

すごい!すごい!やったー!やったー!うれしい!うれしい!

 

  今ならわかる。これで合っている。こうとしか書けない。

  ルドルフ君もこうとしか書き表せない気持ちだったのだろう。